『アジアの路上で』
文・戸田光太郎
第5回 「女の子の心意気」
同系列のテレビ局の北京オフィスに行って、感慨深かった。そこは同局のパリやミラノやミュンヘンやオランダのオフィスと同様、活気がある。元気な若者達がカジュアルな格好で走り回り、打ち合わせをし、コンピューターや電話に向かっていた。これがコミュニストの中華人民共和国だとは俄かには信じ難い。WINDOWSというものもジーンズやコーラやマクドナルドやハリウッド製映画のように世界に浸透してしまった。 ロンドンで坂本龍一氏をインタビューした時、モンゴル旅行から帰ったばかりの彼が言っていた。地域の文化を破壊するという意味でWINDOWSは憂うべきことだが、若者に国境を越えたコミュニケーションのプラットフォームを築いたという意味ではやはり画期的である、と。 さて、北京オフィスで長期出張中のシンガポール人青年ニコラスに会った。彼は私の属するシンガポール本社の視聴調査部から数ヶ月間だけ送られてきている。 シンガポール在住の日本人は新参の私に警告した。「四季がないから時間が過ぎるのは早いですよ。誰といつ会ったか、なんてことは手帳に記しておかないと忘れます。人間、その季節や自分の服装で時を記憶に刻むものですが、それがこの国では不可能ですから」 (7 May.2001「星日報」より All right reserved by TODA Kotaro) |