戸田光太郎の2000年日記
- 2000年12月27日〜28日
2000年
12月27日(水)
- タクシーを呼び、リエとチャンギ空港に向かい、昼12:55発のインドネシア
航空でバリへ飛ぶ。
機内は異様なほど白人が多い。90%はそうだった。
デンパサール空港のゲート横手にいきなりバリ的なレリーフを施した建造物があ
るので嬉しくなる。光が強い。
空港の外では旅行代理店の手配したインドネシア人のガイドが待っていた。ミニ
バスに乗り込んでウブドゥに向かう。
町並みは小奇麗だ。
シンガポールのようにメンテナンス業者や掃除人が雇用されて近代的にピカピカ
してるわけではないが、慎ましい暮らしの中で、心を込めて掃除しているような
のだ。その心意気が嬉しい。
町角で何人も真剣に掃除する女性の姿を見かけた。
開発途上国でも民心が荒廃していると、それはそのまま街の佇まいに現れる。
投げやりな人々の住む街はなげやりな雰囲気が漂う。
バリは違った。
一時間ほどでホテルにつく。
「コマネカ」というホテル。コマネチではない。ネカ美術館を持つアートディー
ラーのネカ氏の息子が経営するホテルで、入り口脇にもギャラリーがある。
そこを抜けるとオープンスペースのレセプションがあって、ここが洒落ている。
植物や調度が優しい。
その奥、敷き石の並べられた小道を行くと左手に小ぶりでオープンスペースの茅
葺き屋根のレストランがある。その向かいには低い櫓を組んだようなガムランを
演奏するミニ・ステージがあった。食事時に演奏されるのだろう。
小道の先を行くと茅葺き屋根のヴィラ形式の宿が並ぶ。
宿泊者一組に隠れ家のような一軒のヴィラが振り分けられる。
緑に囲まれた真っ青なプールが目に入る。我々の隠れ家はその隣りだった。
いい。茅葺き屋根で、部屋は大理石。民俗調のダブルベッドには天蓋がついてい
る。この広々としたベッドルームは庭に面しているのだが、この緑がまるで、ル
オーの絵画もどきの緑一面の眺めで壮観だった。
その奥が実に広いバスルームとなっていた。風呂も大理石だ。
贅沢感があって、よろしい。リエもはしゃいでいた。
ホテルの係りの女性が、お茶と菓子が出るが、ここに運ぶかレストランに運ぶ
か、と尋ねる。
リエは庭で緑を眺めながらがいい、という。
そう頼んだ。
荷を解くうちに民族衣装のような制服を着た女性係りがトレイから庭のテーブル
に茶器を並べた。
チマキのように葉っぱにに包まれたバナナ菓子で、上品な味だ。バリのお茶には
カボスを絞って入れて飲む。
旨い。さわさわと揺れる緑の向こうには田畑があって、それが樹木の間から覗
く。緑のそばは暑くはない。そよ風が心地よい。
お茶の後でホテルを出てジャラン・モンキー・フォレスト、ジャランというのはイ
ンドネシア語で散歩という意味だから、つまり、猿森遊歩道を右に折れて北上
し、ジャラン・ラヤ・ウブドゥのウブドゥ村寺院の辺りで引き返し、店をひやかし
ながら、歩きつかれたところで「カフェ・ワヤン」で夕食した。
入り口は二間くらいしかないのだが、奥が深く、個室や凝ったテーブルもある。
暗く、秘めやかで、雰囲気がいい。こういう雰囲気に弱いであろう、白人が多い。
僕はビンタン・ビールに、ガドガドと、ナシゴレンという定番、リエは、パパイヤ
サラダとチキンカレーを食べた。旨い。
腹いっぱいで少々散歩し、普通は写真を撮らない僕も、風景に魅せられて、イン
スタント・カメラとバリ音楽のCDを買った。宿泊しているヴィラにミニコンポが
あったからだ。
冷房の効いた部屋に帰り、CDをかけ、大理石の風呂にお湯を張り、茅葺き屋根
の天井やそこで優雅に回転する大きな扇を眺めていると心が満ち足りてくるの
だった。
バリは初日から期待させる。
12月28日(木)
ゆっくり起きてリエとオープンエアのレストランで朝食。
緑と南国の花に囲まれて。
二人ともインドネシア風の朝食メニューにする。
チキン・サテやご飯が載った視覚的にも綺麗なプレートである。
西瓜ジュースとコーヒーで。
バリ音楽CDを聞きながら大理石風呂に入り、身支度してから猿の森まで散歩。
鬱蒼たるジャングル公園の底にある寺院がいい。猿の彫像があるのだが、片手で
目を覆い(しかし、一つの目は指の間から覗いている)、もう一方の手は大きく
屹立した自分の陰茎を握り締めていた。いったいこれは何を表すのか?
上の寺院周辺には本物の猿が何匹もいた。
歩きつかれてロータス・カフェで食事。
隣が田園で、お百姓さんが働いているのがいい。
テーブルの脇には池があり、蓮の花が咲いている。
僕はミーゴレン。リエはスパゲッティ。カラマリとサラダを頼む。
ホテルに帰って休む。
天蓋と蚊帳のあるダブルベッドから見る庭は、一面の緑がゆらゆらと揺れて、と
ても美しい。
19時にタクシーでお寺に。
ケッチャという踊りを観る。
大勢のバリ男性が集まって猿のような声をあげ、踊り、娘たちや王族が絡む芝居
をする。公道のノイズがひどいことを除けば、楽しい公演だった。
外で待っていたタクシー運転手に「ベベ・ブンギル」本店で落としてもらう。
とても雰囲気のいいレストランだ。
奥へ通される。
蓮の覆う池の傍のテーブルでフランス人カップルが愛を囁いていた。
隣のテーブルで僕らは名物の鴨料理、ナシゴレン、そしてチャンプルを注文し
た。
オープンスペース。淡い街灯。池。蓮の花。静寂。フランス語の愛の囁き。
満腹になってホテルに戻った。
2000年日記 月別インデックス
- <1月> <2月> <3月>
<4月> <5月>
<6月>
- <7月> <8月> <9月> <10月> <11月> <12月>
- <表紙に戻る>
- <2000年日記トップページに戻る>