戸田光太郎の2000年日記
- 2000年2月29日
2000年
2月29日(火)
- 日本にいる「某米資系食品会社」元同僚とやりとりする。
「経営者側が店舗改装だけを目的に卸価格を下げて本社の利益を減らすとすれば
由々しき事態だ」と彼は分析する。一方、加盟店は粗利が増加することで長期的な
先細りの中で「一息つける」と彼は見るのだ。
僕は全く現在の内情は知らないけれど、過去数次にわたる粗利引き上げは、こ
のままでは飢え死にするしかないという加盟店からの悲鳴と突き上げ、ひいては
加盟店消滅から波及する本部存亡の危機に関わる究極の事態から、やむなしと
なった後手だと想像している。
あの会社が売っていたものは「楽しさ」とか「夢」とか「憩い」だったはずだと思
う。少なくとも顧客が買っていたものはそういう付加価値だ。「味」だけを取り出
して見たら競合はいくらでもある。
十数年前、広報活動の一環で、創業者のアメリカ人Bさんと青山で会ったこと
がある。好々爺だった。あれは、皆を喜ばせながら商売に励んだ人間の顔だっ
た。
加盟店側は「楽しさ」とか「夢」とか「憩い」を提供したいという人でなければ運営
は難しいし、彼らを飢え死に寸前まで放置しておいたら、そんな余裕はなくな
る。経営者に、自分の商売に対する「愛情」が感じられないのが10年前の僕が
持っていた不満の一つだった。当時の社長はD。彼は背任行為で私腹を肥やして
いたらしいが。彼が在任当時ポロっと口にした加盟店に対する本音の言葉は、と
てもここには書けない。
「某米資系食品会社」元同僚は更に、「委託業者を切って進める社員の雇用確保は
多くの軋轢を生む」と見ている。
今まで業者に丸投げで無理難題を飲ませてきたのも、アウトソーシングが無期
限に続くという暗黙の了解があったからである。これから無理難題は平社員が飲
み込むしかない。
僕が最初の転職をする原因となった張本人、「某米資系食品会社」の元社員(在
東京)からもメールが届いていた。
「話は聞いた。やっとあの会社にも現実の波が押し寄せてきたか、という感じがし
た。この10年、世界は実にめまぐるしい動きをしていたのにあの会社だけが時
間軸から外れていたように思っていたからだ。実は皆がどのようなアクションを
取るのか興味深く見守っている。目的を持って残る者、目的なしに残る者、目的
を持って辞める者、目的なしに辞める者、と色々いるだろう。まぁ、この10
年、がむしゃらにやってきた者はこの先何があろうと心配することはないとは思
う。」
僕が「某米資系食品会社」の次に入った日系広告会社はバブルが弾けた時に縮小
し、僕はその時点で退職金をもらって英国のテレビ局に転職した。が、その日系
広告会社は間もなく倒産し、最後まで残った社員に退職金は出なかったし、会社
に金を預けたままマイナスとなった人もいた。残った人は会社に愛着があった
り、社長に対する忠誠心があったのだろうからそれはそれで大変立派だったとは
思う。
でも、「某米資系食品会社」の雇われ社長はどうなのだろう?
僕はこの人を知らないから何とも言えないが、忠誠を尽くすべき人物なのか?
まだ皆、「楽しさ」とか「夢」とか「憩い」を提供したいという強い意志が残ってい
るのだろうか?
10年前にそういう考えをしていた人間は若手の中にしかいなかった。彼らの
中には「この10年がむしゃらにやってきた者」が確かにいるし、その優秀な一群
は「この先何があろうと心配することはないとは思う」という元同僚の言葉には僕
も賛同する。
とにかく、早期退職制度などと会社側が悠長なことを言っているうちがハナ
だ。就職活動をしながら人事と交渉すべし。法律を調べたり、関連書籍を読んだ
り、相談所のアドバイスを受けたりして、割を食わないようにして欲しい。
そして速やかに温室から出ればいい。
船井幸雄著「包みこみの発想」読了。△。この中に「某米資系食品会社」の経営陣
に読んでもらいたいくだりがある。
「商品の絞り込み、省力化、在庫べらし(中略)このような逃げの経営改善法で
は、いたずらに死期を早めるだけである(中略)昔から、多くの戦略書にあるよ
うに、退却する時は、敵軍の三倍の戦闘能力がなければ、みな殺しにあいかねな
いのである。城があって守る場合はまだしも、城がなくて、同一条件で攻守を考
えると、守る側は、気力的に、攻める側の三分の一しか発揮できない。また、逃
げる場合は、攻める側の十分の一の力に落ちこんでしまう」
「城」を直営M店と置き換えて考えてみることも可能だろう。
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