SARSの騒ぎが大きくなってきた。イラク戦争よりニュースの扱いは大きい。
レスリー・チャンが飛び降り自殺したというのでイラクもSARSもかすんでし
まった。彼は46歳だった。自殺した日本人俳優の古尾も46歳だ。
同僚のR嬢が今週で辞めるのでお別れランチ。Rは20ヶ月ほど営業をしたが、
ほとんど仕事が取れなかった。去るのは仕方ないだろう。何も達成できず焦燥し
ていたが、ようやく開放されて晴れ晴れとしている。
早朝出勤。
昼に皆が「誕生日ランチを!」ということで僕は飲茶を希望した。誰も飲まない
ので僕だけビール。これには明日の僕の誕生日と僕の秘書Mの誕生日も重ねて。
僕は魔の46歳、秘書Mは26歳。妹みたいなもんだと考えていたが、娘みたい
なもんだった。優秀である。
夜は辞めていくRらとドリンクス。
「いつも日曜日が来ると私は真っ暗だったの」と彼女は言った。月曜日に営業会
議が毎週あるから、これに毎週「何も進展なし」と言い続けるのは酷だったと思
う。針の筵だ。
帰宅してからは東野圭吾「白夜行」、分厚い弁当箱のような文庫をいっき読み。
面白かった。◎。
「不毛地帯」を見る。もはや30年も前の映画である。原作は、毎回剽窃問題を
起こす山崎豊子。
商社が舞台で、ロッキードの頃に書かれたが、モデル事件は更に遡る。面白かっ
た。映画の出来は安手だが。○。
宮崎学の本を読む。ベトナムのアンダーグラウンドで腕活躍したとんでもない日
本人の手記を紹介したものだが、滅法面白かった。強烈な日本人がいるものだ。
友達にはなれそうにないが。
ワインを飲み、リエの作ったスープを摂る。
読書など。平和に過ごす。
夜はパスタを作る。カルボナーラ。
和食を九龍半島の「富」で、Eさんと。Eさんはリエの学校の大先輩と判明。デン
マーク語学科にいたという。リエはペルシャ語学科である。ローカル・ネタで盛
り上がる。
昼に日系企業のSさんと食事。Sさんは数ヶ月前に香港赴任となった。で、彼の家
族は一週間ほど前に彼を追って香港に到着したというのだが、本社からの家族退
去命令ですぐまた帰国しという。この家族が実は香港に到着する前に大阪の借家
を閉めて解約してきており、宅急便で身の回りの物を送ってきた上でやってきた
そうで、家族は5日ほど外出もせずに香港で過ごしたまま日本に帰されて、大阪
には今は家もないのでやむなくSさんのご実家の群馬県に転がり込んだという。子
供は5歳と7歳、そこに嫁がやってきたので大騒ぎになっているとのこと。香港
の学校が閉鎖されていたため、そのまま帰った子供たちは群馬の学校に編入でき
るかもわからず、近所に友達もいないので家でぶらぶらしている。Sさんは香港に
残って仕事をしている。香港にはそういう色々な事情を抱えた人々が居残ってい
る。
欧米企業に勤務する僕には日本への退去命令はない。
香港国際映画祭はSARSにもかかわらずスタートした。割りに盛況のようだ。
僕もリエとマスクをしながら招待作品を見た。
「たそがれ清衛兵」山田洋次。非常に感動した。満点の☆をあげる。映像が美し
く、全体的に丁寧な作りで、よく練られた脚本がいい。真田の押さえた演技がい
いし、宮沢の美しさも生かされた。子供たちも可愛いい。よくまあ、これだけ美
しい日本の風景を撮ったものだと思う。寅さんと全国行脚した山田洋次のキャリ
アのユエンだろう。70歳でこれを撮る根性に敬服した。ハリウッドでは作れな
い立派な映画だ。第一、こんなに「たそがれた」ストーリーではハリウッドでは
企画が通らないだろう。日本でだって難しいだろうに、山田洋次のキャリアと松
竹に対する貢献で、もはや誰も口出しできなかったからこそ実現したのだろう。
北野武の「DOLLS」は、どこから切っても金太郎飴のように「北野武映画」そのも
ので、太宰治の小説「斜陽」の登場人物が全員太宰だったように、全てが武だっ
た。顔を破壊されたアイドル深田恭子はバイクで事故った武である。彼女に憧れ
る無口な青年も青年時代の武だ。三橋美智也は、いつもヤクザをやる武の分身
で、裏切られて気の狂った恋人と心中しようという情けない青年も武だ。
香港国際映画祭には日本映画も多く来た。
「ぼくんち」は良かった。僕は西原女史の描いた漫画は読んでいなかったので余
計に感心した。日本の底辺に生きる島を「どついたるねん」の坂本監督が丁寧に
描いていた。◎の嬉しい作品。
「浅草キッド」はめちゃくちゃに安っぽい作りの画像だったが、後で知るとBS
用か何かに撮影したらしい。でも、意外に力作で、浅草キッドは熱演している
し、監督の長回しも効果を出していた。北野たけしの原作を思い出しながら楽し
めた。○。
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