深夜まで飲んで、またまた早朝6時起き。
体を壊すぞ。
チェックアウトして、タクシーを拾う。
このタクシー運転手が秀逸だった。
当局に目を付けられるのでここには書けないが、現政権及び次世代への痛烈な批判を
口にした。これを言ってくれる人が二年間も住んでいて一人もいなかったのだから驚
きである。
ほっとした。
ラウンジで白ワインとサンドイッチ。
下村誠の「路上のイノセンス」読了。
香港の古本屋で買ったのだが、この本は1986年の初版で読んでいると思う。初期
の佐野元春について書かれた本だ。もう15年以上も前になるが、僕は佐野元春が好
きだった。もう社会人となっていて、軽井沢で仕事していた時に職場の人間がカセッ
トで処女アルバム「BACK TO THE STREET」をかけていて、はまってしまったのだ。
「つまらない大人にはなりたくない」という彼のフレーズはずっと頭の中にあって、
とうとうつまらない大人になってしまったかもしれない現在の自分と無縁ではない。
佐野元春は非常に詩が上手かったし、インタビューなどで喋る言葉も際立ってカッコ
良かった。
彼に失望したのはアルバム「カフェ・ボヘミア」の時だ。(なんだ、あんなにカッコ
良いこと言っていても作っているのはスタイル・カウンシルのぱくりじゃないか)と
僕は思った。それは、「影響を受けた」とかいうような生易しい形を超えていたから
だ。音楽好きに言わせると、僕が好きだった処女アルバムから3作目までもスプリン
グスティーンのパクリだといわれて原曲で確かめずに、もう熱は冷めた。
それからは1995年のミスチル「ES」まで痺れさせてくれるポップスには出会わな
かった。ミスチルの桜井の書く詩も良かった。初期の佐野元春くらいに良かった。後
でミスチルの伝記を読んだら、やはり佐野元春が好きだったのだと知った。そのミス
チルも遡って全部アルバムを買ったけど、「ES」以外は「イノセント・ワールド」と
「クロス・ロード」くらいしかいいのはなかった。あとは桜井がスキャンダルにまみ
れて体を壊して、最近は音沙汰がない。佐野も桜井も10代のイノセンスに重きを置
く詩人だから、そんな自分が、それでもやはり30代から40代になると、曲を書く
のは辛くなってくるのではないか。
「つまらない大人にはなりたくない」というメッセージをまともに受け止めた僕のよ
うな馬鹿者は未だに「つまらない大人にはなりたくない」と考え続けているのだ。
ああ。いい詩人が書いた、いい音楽が聞きたい。
香港の空港駅からタクシー。
出社。香港オフィスの秘書Mが経費清算してくれた。あの山を片付けてくれたのだ。
彼女は偉い!
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