戸田光太郎の2000年日記

2000年6月20日〜21日

２０００年
６月２０日（火）

朝７時過ぎに北京へ到着。機内で一晩を過ごしたことになる。
機体が北京に近づく。
べったりと薄茶色い。起伏のない地形と古い建物である。
着陸して古めかしい空港ビルに機体が横付けされて中に入ると近代的な内部に驚
かされる。これでは香港の新空港と同じである。係官も機能的に働いているし、
旧東欧やモスクワで味わった感じとは異なる。
会場となっているホテル、北京大飯店へ向かう。
途中の交通ラッシュや工事現場や高速道路から見える風景はフィリピンのマニラ
的なものである。そこに自転車が加わる。
町中には大きなビルが立ち並ぶ。ビルが大きなことはモスクワと通じるが、あち
らよりはずっと機能している様子だ。
中華人民共和国の首都は大都会である。
ホテルは大きく近代的。レセプションは揃ってかなり美人で英語を喋った。ロ
ビーには日本人も多い。
一日コンフェレンスで缶詰となる。
夜はモンゴル系の芸を見せる料理屋に行った。
この店の名物で、酔った客が大騒ぎでテーブルの上でダンスするのである。給仕
は手早く山のような料理を片付け、皆は楽団に合わせて踊る。
その後はバーを数件まわって飲み続け、ある一件ではシャンペン、テキーラ、
ウォッカ、ズブロッカ、ブランデー、と、それぞれを数杯ずつ飲み、全員狂った
ように暴れまわった。
ホテルに帰って寝たのは午前３時。
むちゃくちゃハードな北京の一日だった。

６月２１日（水）

定時の朝９時になってもコンフェレンスに現れた人間はいなかった。座長のイギ
リス人は今朝５時まで暴れていたとのこと。僕も二日酔いでぼろぼろだったが、
皆も、グロッキーである。それでもなんとか一日のスケジュールを消化した。
で、夜は中華料理の老舗に行った。歌あり曲芸ありで、またまた山のような食べ
物が出てくる。
皆、もう二度と飲まない、などと言っていたくせに、ビールと食事で調子が多少
戻り、タクシーで｢ロフト｣へ。
｢ロフト｣はニューヨークにあってもおかしくはない酒場で、麻布にあっても、ロ
ンドンにあっても不思議ではないバーである。つまり、僕にとってはそれほど魅
力ではない。
気の合った数名と紫禁城の外苑にあるバー･レストランに向かった。地下が画廊に
なっていて一回が綺麗なレストラン、上の屋根裏部屋が居間のようになってい
て、大きな窓から紫禁城の掘りが一幅の絵画のように眺められる典雅な隠れ家と
なっている。ここでシャンペンと赤白のフランス･ワインを飲んで話した。香港近
郊に住む中国女性Ｖは金髪に染めていて、ファッション･センスといい、原宿顔負
けである。英語は上手い。中華系シンガポール人インテリ青年Ｎはこの場所を教
えてくれた本人だ。英語が苦手だという台湾女性Ｍはファンキー。英語、北京
語、広東語、マレー語が自由自在なパワフルな女性Ｌはマレー系シンガポール人
だ。そして僕の同僚Ｓはインド系シンガポール人。まあ、ほとんど、世界のどこ
にいても皆、考えていることにそれほど違いはない。
ホテルに帰ってからもＮの部屋で酒盛りが続き、バケツでの水の掛け合いとな
り、Ｎのダブルベッドはプールのようになってしまった。
我々は大笑いで死にそうになった。
修学旅行のような北京であった。

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