戸田光太郎の2000年日記

2000年7月21日

２０００年
７月２１日（金）

朝７：３０には出社して全力疾走で仕事。
昼食も個室のデスクで弁当を摂る。
途中、チャイナタウンにあるアメリカ人ＣＧクリエーターＪのロフトに行って広
告代理店（ＮＹＣ生まれの中国系アメリカ人）や局のエグゼクティブ･ディレク
ター（中華系シンガポール人）、とアシスタント（ギリシア系イギリス人）など
を交えてストーリーボードの説明を受ける。その後はオーストラリア人Ｓと打ち
合わせ。
シンガポール人アシスタント嬢Ｂと一服する。
会社に戻って夜８時には切り上げてビル地下のスターバックスでリエと落ち合
い、近くの超大型ホーカーズで夕食。
あまりに店が多いので、どこで食べたものか迷う。
生ビールと、貝柱とブロッコリーの炒めもの、焼き飯、魚介類と豆腐の炒めも
の、エトセトラ。旨い。
タクシーを拾って同僚の参加しているパーティーに二人で顔を出す。インド系シ
ンガポール人女性Ｍの家族が住む豪邸だ。電動門が開くと庭に噴水がある。調査
部のＮや広報の女性部長Ｓがいた。その横には白いベンツ。裏手にはプール。
部屋に入ると大きな居間で贅沢な調度に驚く。
居間の端にバーがあるのだが、これが熱帯魚と金魚の泳ぐ横長の水槽になってい
て、その上にグラスや食べ物が並んでいた。インド人Ｇがバーテンがわりに飲み
物を作ってくれた。
踊って飲んで話しているうちに、皆、庭の噴水脇のテーブルに集まって話し出し
た。
制作部で働く韓国人女性の話に驚く。彼女は顔立ちがいい元気な女性だ。ソウル
のクラブでＤＪをしていたという。レコードやＣＤのコレクションは膨大で、そ
れを処分してロンドンに渡った。そしてハイドパークに面した高級ホテルでバー
テンになったのだ。ここでのバーテン･テクニックや（｢映画『カクテル』のト
ム･クルーズの技なんて、初歩の初歩よ｣）、出張してくるエグゼクティブからの
誘いのかわしかたや、彼らの野放図な出張浮気生態などに笑う。特にアラブ人の
話が凄い。
するとパーティー主催者であるインド系シンガポール人女性Ｍが、ニューヨーク
に留学していた経験からアラブの男の話を披露した。
彼女の親友がアラブ人に恋をした。彼は贅沢をさせてくれ、マンハッタンの高級
マンションに住ませてくれ、ゴールドカードを貰い、運転手付きの車をあてがっ
てくれた。両親にも紹介したし、数々のパーティーにも同伴した。Ｍは世界で手
広くビジネスをやっている父親からアラブの男に関する注意を散々聞かされてい
たので、そのｐ親友にも忠告したのだが、無視された。やはり、そのアラブ人に
は故国に妻子がいたのだろう。友人が妊娠すると彼は消えた。マンションの家賃
は未払いとなり、カードは止められ、リムジンは運転手ごと消えた。やはり、故
国では許されないことを財力によって外国で｢旅の恥｣をかき捨てしていただけの
無責任男だったのだ。
親友はあまりの顛末に精神までやられてしまったという。
さて、インド人Ｇの話。
男はいい生活を求めて頑張っている。デリーでも、ニューヨークでも、パリで
も。
ところが、インドにはまだまだ水が５キロ離れたところまで歩いていかないと入
手できない僻地も多くあって、その人たちにとっては、｢いい生活を求めて頑張
る｣ということは毎日５キロを往復して水を汲むことにある。一方でデリーには英
字新聞を読んで近代的な生活をする者がいる。
Ｇも、いい生活を求めてＭＢＡを取得しようとして、あまりに退屈なので脱落し
た人間だ。ＴＶ局勤務の前はインドのソニーにいたという。

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