戸田光太郎の2000年日記
- 2000年8月13日
2000年
8月13日(日)
- 日曜日も朝から働く。
いい加減、疲れた。
スタッフの疲労も激しい。
コンサートが始まる。
クライアントの時間帯は今回、完璧だった。スタッフは抱き合って歓ぶ。クライ
アントも大喜び。
ところが特定クライアントがフォーカスされたために、他の地元クライアントが
怒ってしまった。
あちらを立てればこちらが立たず。
台湾にとっては迷惑な話で申し訳ない。
そう言うと、台湾の人達は、「一つ一つ解決していくしかないから。仕方ないさ」
と優しい。
何ていい人達なのだろう。
安心したところで相川七瀬のステージが始まった。
記者会見ではあんなに大人しかった彼女が飛び跳ねてロックしている。
可愛い。惜しげなく動く。けなげだ。
若い彼女の姿に打たれ、ジーンとしてしまった。
歌謡曲的な彼女の似非ロックはそんなに好きではないが、満場の台湾の若者を沸
騰させるその技量に感動した。
堤防が決壊した。最近、涙腺が緩いようだ。
海外公演は初めてだと合間に日本語でトークしていた。「でも、ずっと音楽やって
いて良かったと思いました」
うむむ。そうだろう。記者会見であんなにシャイな人間が音楽をやる時はこんな
に解放されるのだ。
そして、トリは大御所ココ・リー。風格である。松田聖子というよりは、身空ひば
りの風格で堂々たる歌唱と踊り。
すげえな。若いのに、この土性骨の座ったエンタテイナー振り。
途中、バーチャル・キャラとの絡みがあったのだが、これまた無事に済んで、とい
うよりは期待以上の露出でクライアントは得意満面で帰途についた。
シンガポールのスタッフや台湾のスタッフと歓びをわかちあう。
終わり良ければ全て良し。
また祭壇に向かってコンサート前と同じ儀式をして神に感謝し、スタッフと歓び
をわかちあった。
特に台湾の女性プロデューサーLは素晴らしい女性だった。ワーナー・ビレッジで
の中国語台本を書いてくれたのも彼女だし、コンサートに台本書き直しも彼女
だ。途中、シンガポールの女性スタッフと衝突したものの、始終、そのしなやか
な物腰と、機転、笑顔、ユーモアは我々のささくれ立った心を潤した。顔そのも
のが可愛いわけじゃないのだが、バーチャル・アイドル技術者連は彼女にすっかり
魅了されていた。制作部の白人、アメリカ人やオーストラリア人は彼女に心酔し
ていて、(あの子を肩に抱えてさらっていきたい)とまで言っていた。
その気持ちはわかる。
しなやかで、根性があって、いつも笑顔で、妖精のように舞いながら台本を書い
たり、演出したり、八面六臂の活躍をして、汗ひとつ飛ばさない。
英語は達者だし、とびきりの笑顔があって、飛び跳ねながら物事を進行させ、時
に熱い感情をぶつける。
育ちがいいのだとも思う。
そして台湾の営業の女性S、営業部長男性S。クライアント担当JとS。皆、素
晴らしかった。
一生懸命の人々は美しいな、と思った。
日本は負けてしまうぞ。
1989年からこっち、民主化を推し進めた李登輝も偉かったしな。彼やシンガ
ポールのリー・クワン・ユーのような政治家が日本にもいればいいのに、と思うの
だが、現実は悲しい。
ええかっこしいの上に粗忽だけど、せめて石原慎太郎に大改革してもらった方が
いいのではないのか?
スタジアムで神に祈りを捧げる営業部長Sさんの姿も好きだった。
日本や日本人は、どうしちゃったのだろう?
打ち上げは徹底したどんちゃん騒ぎで、ぼろぼろになりながら夕食、ベルギー・
ビール大会、ワイン・バー、クラブ、ダンス、カラオケ、と付き合い、へとへとに
なって外に出ると明るくなっていた。
朝6時過ぎ。
こんなこと、もう20年も続けているような気がする。いつまでやっているのだ
ろう?
まあ、いいか。
台湾の人々は素晴らしく、僕はやたらと嬉しくなった。
皆で力を合わせた文化祭が終わったみたいな気分だ。
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