戸田光太郎の2000年日記

2000年8月21日〜22日

２０００年
８月２１日（月）

朝ご飯はカレーにする。西洋朝食もあるのだが、僕は断固としてカレー。旨い。
９時から会議で１４時に昼食。またカレー。
午後は全員で屋外に出て｢オリンピック｣。
テニスや水泳やらを雨天の中で決行。
もう雨季に入っていて、だから割引バーターで多くの社員が集合できたのだが、
毎日雨なのである。
自転車によるチームのリレー対決があり、京都の大学時代の４年間自転車通学し
ていた僕は全員追い抜いてやるつもりで思いっきり漕いだところ、自転車チェー
ンが切れて雨の泥道に転倒しておお怪我をした。左腕肘と左足に擦り傷。インド
の大地は黴菌がウヨウヨなので保健室に収容された。僕の酒好きを知るチーム
リーダーＳ嬢が部屋のミニバーからウィスキーを運んできてくれる。有り難い。
僕だけではなかった。
台湾美女Ｓの自転車はブレーキが効かずに転倒し、頭を打って腕に怪我をした彼
女も保健室に収容された。
医師が来て手当てする。
僕は酒を飲んでいたので破傷風の注射が出来ないといわれる。２時間後にする、
とのこと。
台湾美女Ｓはシリアスで、彼女の手当てが優先された。
もう一人、北京オフィスのＹも雨道で自転車がスリップして足首を捻挫したとい
う。
僕は言い訳が出来たので嬉しかった。とっとと部屋に戻って風呂に入ると、ベッ
ドで村上龍の｢失われた１０年｣を読んだ。これは誠に面白い本だった。◎。
夕方、ホテル内のクラブでレゲー頭の鬘をつけてボディー･ペイントをして踊る。
疲れたので１２時前には部屋に戻る。

８月２２日（火）

朝９時から会議。
午後は一部の集団と、ゴアの北部の町へ繰り出す。
また大雨である。
バスで２時間ほどすると西欧風の教会が見えてくる。黄色っぽい石造りで、南欧
風というのが正しいが、確かにここはポルトガル領だったのだから、ポルトガル
風、というのが正解だ。遠くリスボンの町並みにあった教会とインドのゴアが結
びつけるのだから、インターネット以前の人間の営みも物凄いと思う。
小さくて臭くて雨の振る小汚い町で買い物。
僕は本立てが欲しかった。
像が本を両側から押して支える本立てがあったので即購入。
また１時間ほどかけてホテルに戻るとすぐ夕食の時間が近づく。
チームリーダーのＳ女史が今晩の夕食時の出し物の練習をしようというのでホテ
ルの一角に集まった。
我々のチーム名は何故か｢ブラジル｣である。Ｓ女史は｢イパネマの娘｣を全員で合
唱しながら、イパネマの娘に女装した僕が踊って現れて仰天させるという案を投
げていた。
僕はそういう阿呆なことが青年時代は死ぬほど嫌いだったが、東京で米資系某食
品会社に就職して間もなくして温泉での社員旅行で新入社員の隠し芸大会で、化
粧して鬘をかぶり、ピンクのミニの制服を着て、おにゃん子クラブの｢セーラー服
を脱がないで｣を歌ってから羞恥心が麻痺して何でも出来るようになってしまっ
た。日本で馬鹿な会社員生活を続けていると面の皮が厚くなるのだ。カラオケも
昔は大嫌いだったが、今では誰の前でも平気だ。
バスで移動したレストランで、食後、僕は女性人に化粧され、インターネット会
社から参加している中国人女性のピンクのブラをつけ、チームリーダーＳ女史が
わざわざ購入した腰巻きをつけて出番を待った。｢イパネマの娘｣が聞こえる。僕
は指先を繊細に動かしながら、腰を微妙にくねらせて歌詞に合わせて登場し、開
場は爆笑の渦となった。
馬鹿野郎。宴会芸で特訓されている日本人にとっては、こんなことは朝飯前なの
である。まして僕はバンドをやっていたこともあるし。あがらないのである。
やんやの喝采。
惜しくも｢ブラジル｣チームは金賞を逃したが、僕が個人芸能特別賞を取ったので
チームは大喜びだった。
どこの国に行っても、馬鹿な俺、である。

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