戸田光太郎の2000年日記

2000年9月17日〜18日

２０００年
９月１７日（月）

ブランチをＤＯＭＥで摂る。僕はサラダとスパゲッティのボロネーゼ。リエは
サーモンのペンネ。ボロネーゼの方が旨いのでリエに譲る。
タクシーでＮＵＳ（シンガポール大学）に行く。
リエが中国陶器について調べているうちに、僕は中央図書館６階の日本語文献を
渉猟する。
嬉しい。
中国文学。歴史。戦記。特にマレー半島を南下してシンガポールに辿り着く戦史
には興味がある。実に細かい記録が残っているのだ。歩兵の構成、兵站、馬、食
料。これを耽読したら数日かかるだろう。
日本語学や日本学の本も多い。中上健次全集。夏目漱石。太宰治。壇一雄選集と
いうのが特に読みたいなあ。開高健全集もある。村上龍も村上春樹もほとんど読
んでいるからいいけど、大仏次郎とか、読みたいなあ。
でも、時間がない。
僕はビジネスなんかやってないで本に埋れていた方が幸せなのではないか？
いや、違う。
本の虫みたいな人々は苦手かもしれない。
現実とコネクトされていながら読書もする人がいいよな。
第一、今年の１月半ばから５月半ばまで、僕は読書三昧できる環境にあったの
だ。
それは結してこの世の極楽ではなかった。
タクシーで地下鉄クレメンテ駅近くに行き、ホーカーズで食事するが、近くの店
主が床に痰を吐くのでリエが食欲を無くす。
僕も若いときは繊細で、そんな時は一気に食欲を無くしていたと思う。
今ではゴキブリが目の前を横切ろうが、髪の毛が入っていようが、（おいおい）
と思うくらいで食べてしまう。
リエは２５歳にしてはタフだと思うが、こっちは無神経を通り越して鈍感の向こ
うの｢無感覚｣になっているのだということに自覚的でなければいけない。
ＭＲＴでオーチャードに出て、スコッツ通りの伊勢丹にある｢とん吉｣でトンカツ
を食べて口直し。満腹だ。
夜、プールで泳ぐ。

９月１８日（火）

白川道著｢流星たちの宴｣読了。７００ページに近い長編だが一気読了だ。
バブル期、兜町にいた４０歳過ぎの書き手の処女作で、前半はがたがたしていた
ものの、あとは、ぐっと読ませる。
いい。
しみじみしてしまった。
続いて和製ハードボイルドを読もうと、北方謙三の｢約束｣に手を出したが、なん
だこれは、志が低い。水増しした文章に辟易して読み進めない。
やばいぜ、北方。
日本の作家は｢売文｣しなければ生きていけないのだから仕方ないのか。
リエは論文を書いているので、僕はご飯を炊いて、ホーカーズで中華のオカズを
買ってブランチとした。
食後はプールで泳ぐ。
洗濯して部屋を掃除する。
増殖する本を整理し、掃除機を掛け、濡れたタオルを絞ってフロアを拭く。
寝室と居間はピカピカになった。
スティービー・ワンダーのバラード集を聴いてリラックス。
台湾のコンサートで聞いた平井堅ヴァージョンのＬＡＴＥＬＹが良かったから
だ。確かにこの曲は切ない。

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